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Archive for 4月, 2009

No.00459

zimukumi21
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lane-of-bowling   

妖怪「同期の桜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研修最後の前日、私は声を掛けた。
「いよいよ明日が最後の研修です。お疲れ様でございました。
 こうやってみなさんと過ごせたのも、何かの縁でしょう。
 どうです?明日は、打ち上げといきませんか?」

家庭を持っている者、特に女性は外食しづらい。事前告知が当然ではないか。
案の定、不参加がいた。丁重に断ってくる。
まんざら嘘でもなさそうである。おそらく本人は、参加したかったのだろう。
「せっかくですのに、ごめんなさい。主人の食事を作らないと…」

社交辞令を述べる。踵を返す背中に、ある虚しさを感じた。
この女性は果たして、幸福な結婚生活を送ってきたのだろうか。
一足先に定年退職したご主人は、終日ご在宅らしい。既に身体の不調、そこかしこ。
行く末を案じて受講した、ヘルパー2級の講習であった。

「おつかれさまで~す。」「かんぱ~い。」
若者の普遍性とは異なるが、弾んだ声が部屋に充満する。
気軽に参加してくれた講師に、皆が感謝する。居眠りしていた者まで、得意げに。
何を言うか、と一笑に付される。頭を掻き掻き、新たな笑いを誘う。

幸福な時間は、過ぎ行くのも早かった。いつかの再会を、各々が生返事。
靴を履いた瞬間、共有した時間と離れる思いが始まっているのだ。
家族の介護を目的とした者、再就職が決まっている者。三々五々、帰路に着く。
駅までの短い道のりを、気にならない程度の霧雨。私は、誰もいない部屋に帰る。

「佐藤さん、今日は来れないって。さっきメールがあったよ。」
「本業が忙しくなったみたいね。介護の仕事、今はしていないんでしょ?」
「鈴木さんも、お義母さんが亡くなって介護の必要がなくなったらしいね。」
「あれ?高橋さんは、どうしてるんだろう。」

受講してもう10年になる。たまに連絡を取る程度の関係、久し振りに集まった。
4人ぐらいがちょうどいい、と負け惜しみを言いながら大根サラダを追加注文。
各自の予定で、ずれてずれての会食だった。やはり懐かしい。
互いの近況の後、知っている程度の情報交換。できれば一堂に会したかった。

「山田さん、気の毒に亡くなったんだよね。」
「心筋梗塞だったそうよ。以前から、狭心症があるって言ってたしね。まだ若いのに。」
「最後は動悸で錯乱してたそうよ。」
私はドキっとした。以前から狭心症がある。最近、発作が増えたような気がする。

「しかし、和田さんは元気よね。羨ましいわ。同期の桜で一番、元気じゃない?」
「ホント。みんな散ったり、枯れてしまったり。」
「枯れてしまった、は寂しいわね、でも和田さんみたいに、元気でいたいわ。」
「私、名前が桜なの。八重桜みたいに、遅咲きかな?」私は、作り笑顔で答えた。

 

 

 


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あとがき
他人の不幸は、なかなか分かりません。
幸せそうな顔を続けられる方が、すばらしく思えます。
つらいことが顔に出ない方、さすがです。

もっともっと、徳を積みたいものです。

 

 

 最後まで、お読みいただきありがとうございました





No.00458

zimukumi21
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妖怪「つるべ火」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ター坊のヤツ、おせえなァ。」
「来た来た。あ、あいつ。バット、持って来やがったぞ。」
「おおい、みんなァ。遅くなってごめんごめん。」
「ター坊、おまえ、それ。ば、バットじゃねえか。買ってもらったのか?」

「うん。この前、釘が出ててボールが破けちゃっただろ?
 父ちゃんにねだって、買ってもらったんだ。ほら、軟式ボールもあるよ。」
「すげえや。ター坊んちの父ちゃん、役所に行ってるもんな。」
「早く、始めようよ。ボク、ホームラン打つんだい。」

今はビル街になっている土地で、その昔に見られた光景であった。
町の至るところに空き地があった。有刺鉄線をめぐらせても子供には無意味である。
日曜ともなると、日が暮れるまで遊んだ。それができない現代、不幸としか言いようがない。
しかし、そんな時代もやがて変遷が訪れたのだ。

「なんだ、この看板。もう、ここで遊んじゃいけないのか?」
「父ちゃんが言ってた。ここにデパートが建って、人が住むんだって。」
「ヒロシ、それアパートじゃねえのか?」
「あ、それそれ。それが建つんだよ。コーサクは頭、いいなァ。」

「おい、いいこと考えたぞ。みんなで悪戯して邪魔しないか?」
「工事の邪魔したら、おじさんたちに叱られるよ。」
「違うんだ。火の玉が出るぞって噂を広めるんだよ。」
「知ってる。つるべ火って言うんだよね。やろう、やろうよ。」

「いいか。少しだけだぞ。灯油をたくさんかけたら、自分が火傷しちまうからな。」
持ち寄って、丸めた新聞紙に灯油を浸み込ませた。夕飯後に抜け出して来ているのだ。
「やっぱり、夜は寒いや。幽霊や妖怪って夏に出るんじゃないの?」
「ばかやろー。夏まで待っていたら、空き地がなくなっちまうじゃないか。」

釣竿にぶら下げた新聞紙の玉、浸み込ませた灯油に着火。これで、ふわふわ通行人に見せる。
だが、しょせんは子供の浅知恵。つるべ火は釣り糸を燃やして、ぽとりと落ちた。
新聞紙の重み、万有引力。リンゴを剥かずにかじる。ニュートンさん、歯ぐきから血が出たよ。
釣り糸を焼き切っていったん、地面に落ちたはずが宙に浮く。わあ、と叫んで逃げる子供たち。

翌日から、夜になるとつるべ火がふわりふうわり。
遅い帰宅の通行人が驚いた。酔っ払いは腰を抜かすし、近所の犬はわんわん吠える。
たちまち広がり、建ててもアパートには入居者もなかろう、と専らの噂。
たまりかねて地主の爺さん、諦めた。頑固じじいも、ばあさんと幽霊にはかなわない。

条例によって土葬が禁止されるまでは、暖かくなるとリン成分が空中を浮遊した。
青火がぱァ、ボヤがぽォ。晴れた日の夜しか、もちろん出ない。
「打ったなァ、ター坊。ホームランだ、すげえや。」
しかし隣地の墓地だけ残して、この空き地が消えたのも、すぐ後のことであった。

 

 

 


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あとがき
子供は遊びの天才です。やりました、やりました。
神社でソフトボール、神殿にボールをぶつけまくりです。
かくれんぼ、すれば屋根に登るヤツ、床下に潜るヤツ。
みんなで解散しようとしたら、賽銭箱から泣き声が聞こえます。
中に入って隠れていたヤツを、みんな忘れておりました。ごめんね、ヒロ君。

 

 

 最後まで、お読みいただきありがとうございました





No.00457

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妖怪「ねえねえ、聞いた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あちきは、イヤでありんす。」
「ダメだ、ダメだ。キセルの吸い方がまるでなっちゃいねえ。」
「だって…私、タバコが吸えないんです。」
「関係ねえよ。女優になりたきゃ、練習しろ!」

淀川芸術大学では今日も、演劇の練習風景が見られた。
多くの俳優を輩出しているこの大学では、役者の卵たちが自己研鑽に勤しんだ。
飲酒は違う液体で表現できるが、喫煙は会得するしかない。
役者になりたければ喫煙もヌードも、臆していては始まらないのだ。イヒヒヒ。

大学から遠くない、とある中華料理店。教授と生徒が入っていった。
生徒の方はオーダーを決めあぐねている。悩んでいたのだ。生徒の方が誘ったのである。
これは教授の不倫話ではない。ご期待のむきは日を改めていただこう。
どうせ作者は、そのうち不倫話も書くはずだ。うんうん、そういうヤツなんだよ。

絶対数が少ないせいか、この大学から脚本家の誕生は少なかった。
だが決して、無能な訳ではない。むしろ期待の星がいた。そう、この生徒であった。
過去の作品に、教授も彼女に目をかけていた。手をかけたかどうか、は知らない。
彼女は、普遍的な壁にぶち当たっていた。至って単純かつ、命題でもあった。

「先に食べようよ。そのあと、ゆっくり聞かせてよ、ね。」
「は、はい。あ、これ…この蒸し物、おいしいですゥ。」
若いことはすばらしい。子ではない。事である。森羅万象、感動の対象にできるのだ。
「やっと、笑顔が戻ったな。暗い心では、いい作品なんて生まれるものか。」

食事を終えた頃を見計らって、スタッフがジャスミン茶を淹れる。生徒は話し始めた。
「汎用ドラマの場合、主人公のナレを一人称にすべきでしょうか。三人称でしょうか。」
自分に当てはめたシチュエーションの脚本に着手していた。もちろん、架空の設定である。
「大坪君、一人で悩んでないで何でも、相談に乗るよ。最近、元気がないじゃないか。」

「先生、弟が万引きしたみたいなんです。私、どうしたらいいかと思って。」
レジを出て、教授は読みかけた彼女の脚本どおり、演技を始めた。察した生徒も続く。
遠ざかる二人を、その声量で確認したのか、店の前の壷から一人、二人と顔を出した。
「ねえ、聞いた?大坪さんの弟さん、万引きしたんですって。」

「聞いたわよ。大坪さんも、これで終わりね。大スキャンダルじゃない。」
「見かけによらず、複雑な家庭だったのね。ご両親もダブル不倫とかしてたりして。」
「わからないわよォ。真面目な顔して、彼女だってェ。」
「私、少し前から仲がいいの。そんな風に見えなかったけどなァ。聞いてみるわ。」

「大坪さん、聞いたわよ。弟さん、万引きしたんですって?大変ね。内緒にしといてあげるわ。」
坪川が親切ごかしに言い寄ってきた。途端に、腹を抱えて笑い出す大坪。
「つ、つ、坪川さん。それ誰に?私、一人っ子。それって今、書いている脚本なの。あはははは。」
笑い終えるどころか、とうとう座り込んでしまった。どうやら彼女の、笑いのツボに入ったようである。

 

 

 

 


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あとがき
いますねぇ、こんな人たち。
どこで誰が見ているか聞いているか分かりません。
でも、勘違いした人たちのバカらしさ。
日本は平和です。
 
 
 

 

 

 最後まで、お読みいただきありがとうございました





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