Archive for 9月, 2009
No.00612
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自分で悪い癖、だとは思っている。
ぼおっと幹線道路を走っていると、すぐに飽きが来る。
つい横道に逸れたがるのは、人生も同じなのかも知れない。
昼食を摂っていないことに気がつく。趣のある手書きメニュー看板に、引き寄せられた。
「あの~。」
「はい、お決まりですか?」
「この温麺(うーめん)て、にゅう麺とは違うんですか。素麺の温かいやつ。」
「温麺と素麺は、まったくの別物なんすよ。製法からして、違いましてね。」
「ほう。おもしろそうですね。これ、いただこうかな。この温麺セット、ください。」
生まれた地から一里四方で採れた物を食べていれば、病気しないと聞いたことがある。
それも道理だが、大阪市中央区から4km四方も今は、ビルしかない。
食文化において私の好奇心は、ここでもその食指を動かした。
「はい、おまちどうさま。いいですかい、お客さん。温麺と言うのはね・・・」
気のいい店主である。昼時を過ぎて訪れたせいか、他の客はおらず奥さんと思しき女性が
かちゃかちゃ、と食器を洗っている音がする。少し前に来店ピークを過ごしたのだろう。
古くて風情のあるテーブルの向かいに、店主は腰掛けた。
「だいたい、温麺ってヤツはだなァ。麺が短くできているから、茹で上がるのも
早いって訳だ。下手をすりゃ、茹で過ぎてコシをなくしちまうんだよ。
湯温が下がらないように、大きめの鍋で茹でるんだよ。もちろん、一人分でもね。
あ、お客さん一人分だからってイヤミを言ってるんじゃないんだ。」
「それだけ、丹精に茹でていらっしゃるんですね?」
「そ、そう。それだよ。お客さん、分かってるじゃねえか。嬉しいね、まったく。
おい、母ちゃん。車海老があったろう。2,3本見繕って揚げてくれ。
このお客さんに出してあげな。話の分かるお客さんだ。東京の人かい?
え?神戸?大阪の?神戸って言うと、地震があったとこだろ。大変だったねえ。
お客さんは無事だったのかい?いやね、宮城県にも大きな地震があったんだ。
田舎だから都会ほどの被害はなかったけど、それでもその冬は大変だったんだよ。
東北の冬は厳しいからね。もっとも寒いからこそ、おいしい温麺ができるんだけどね。」
「いい加減にしなよ、あんた。
お客さん、いつまで経っても食べられないじゃないか。すみませんねェ、ホントに。
悪い男じゃないんですけどねェ。話が温麺になると、もう夢中でねェ。
これでもね、若い時は温麺の製造で県知事賞を取ったことが、あるんですよ。
そうそう、あの写真なんですけどね。どうです?今は見る影もないですけどね。
老舗で温麺を作ってたんですよ。ええ、私もその店で働いてたんです。
いい男だったから、私の方からアタックしたんですよ。あれ、今はアタックって
言わないのかな?そうしたら、この人ったら黙り込んだ、と思ったらいきなり私を・・・」
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あとがき
取引先に教えてもらった温麺ですが、とてもおいしかったです。
東北の自然は、おいしいものがこんなにあるんだなって思いました。
厳しい寒さに耐えたご褒美は、おいしいものだらけ。
神戸に戻った今、思い出して懐かしんでいると取引先から送られてきました。
最後まで、お読みいただきありがとうございました
No.00611
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まったく、バカなことをしたもんだ。真空断熱パネルが入って、2万円以上する。
もっとも自分で買ったのではなく、ある会社に買ってもらったものなんだけど。
そんな高価なクーラーボックスを壊してしまった。まったく、情けない。
走行中にトランクから小さな爆発音。降りてみたら、クーラーの蓋が吹っ飛んでいた。
冷たいままに運ぶため、トランクに26リットルのクーラーボックスを入れている。
毎日、どこかで氷を調達していた。買うのはバカバカしい。
とある有名スーパーで、ドライアイスを入手した。セルフサービスだ。
備え付けのポリ袋に入れる。私はうっかりと、くくってしまったのである。
二酸化炭素を冷却して固体にしたものであるから、温度が上昇すれば気化する。
理論的にマイナス79℃で昇華するはずだ。袋でくくれば逃げ場がない。
ご丁寧に2つも欲張ったものだから、袋の容積いっぱいに膨らんだ二酸化炭素が
クーラーボックスのヒンジ具を壊してしまった。私としたことが、情けない。
仙台宮城インターで入った東北自動車道だが、最初のPAで修理することにした。
駐車場に車を停めてトランクを開く。幸い、そこそこの工具は揃っており、
ヒンジの樹脂部分を確認。ビスが飛んで、受ける樹脂のネジ山がなくなっている。
ネジに付いた樹脂クズを丁寧に除去、穴に瞬間接着剤を流し込んだ。
クーラーボックスの修理に手間取ることはなかったが、原因が原因。落ち込んでしまう。
幸いにも、冷蔵対象は温度を低く保っていた。氷を入手して、丁寧に蓋を閉める。
トイレに行って用を済ませた後、心の目を覚ますために顔を洗う。ついでに歯磨きも。
幾分、すっきりして能天気な私は、ここはどこだろう、と考えた。
東北まで車で来れることは今後、少ないだろう。知っている地名に、行って見たい気持ち。
船岡、涌谷、茂庭、一ノ関など山本周五郎氏の作品「樅の木は残った」に出てくる。
実際は、ほとんどが行けていない。その昔、好きだったフォークグループがライブで
メンバーを冷やかしていた、岩手県下閉伊郡には何とか行くことができたのだが。
駐車場に停めた車に戻った私は、建物の上部に書かれたPA名にひっかかった。
「菅生」の文字が何かを思い出させる。すごう・・・高井幾次郎氏だ。
私は二十歳頃、命知らずの運転をしていた。失うものもなく、公道を暴走した。
当時、国内で販売される最大排気量の750ccは、当然だが早かった。
迷惑を掛けたくない、などと言いながら危険行為は避けたものの速度超過は常である。
走るならサーキットで、と思いながら時間が取れないまま、バイクを降りた経緯がある。
その頃、当然のようにプロライダーに憧れた。その中で高井幾次郎氏の名前もあった。
ヤマハの黄金期を築いたライダーは、ここ菅生のサーキット、第1コーナーで散っていく。
もちろん出会ったこともないし、今では顔すらも思い出せない。しかし菅生の文字で
思い出した、若きライダーに私は目頭が熱くなった。人は簡単に死んじゃいけないんだよ。
その後、私は自分の命より大切なものを作ってしまったために、バイクを降りた。
あのまま速度超過を続けていれば、私は無名のままに公道で消えていただろう。
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迷惑は掛けたくない、と音が大きくなる改造を礼賛するライダーには
一線を画していたつもりでした。確かに夜中の爆音、人間のカスです。
しかし20km制限の道路を120kmで大型バイクが駆け抜けた時、
目の前の子供に間一髪だったら。思い出しても恥ずかしく思います。
最後まで、お読みいただきありがとうございました
No.00610
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確か、漢方ではアイキとか言うのではなかったか、と思う。
何でも西洋では放屁より、下品なものとされるらしい。
実際、聞いて気分のいいものではない。フロントで鍵を受け取った時には
まだ出なかったのが、せめてもの救い。彼らだって不快な思いはしたくなかろう。
鍵を回し、ドアを押し開ける。真っ暗な部屋の、ドアの横の壁にキーを差す。
部屋に明かりがともり、奥へ入る。どっか、とベッドに身を投げたがすぐ、起きる。
乱暴に服を脱ぎ捨てて、シャワーを浴びた。ぷしゅっ、と缶ビールを開ける。
ノートパソコンを立ち上げた時に、口から下品がこぼれた。
今夜は飲み過ぎた訳ではない。楽しい酒であったには違いないが、
同行者がまったく飲まなかったため、私は生ビール2杯で後を望まなかった。
小柄な女性なのだが、食事量が凄い。ほとんど、召し上がらないのだ。
自身で勧めておられながら、箸が進まない。かなりの少食らしい。
社長不在で、いわば全権大使で来られた側近の方だったが商談は成立した。
事前に打ち合わせており、調印こそないものの批准的商談は、食事もうまかった。
「私、こんなに食べられませんから、これどうぞ。」
これ、じゃなくこれもこれも、と小皿を突き出す。おまけにお勧めを追加注文。
私のアイキも道理であろう。私は大柄ながら、世間平均を消費できないし。
シャワーのあと、下着姿に首へタオルを巻いてパソコンに向かった。
今夜の商談と相手は違うが、提案書の作成をメール送信する予定だった。
期限はまだだが早い方に越したことはない。明日の朝にでも、送信するつもり。
便利な世の中になったものだ、と感謝する。好き勝手な放浪生活をしながら、
事は携帯電話とメールで済む。ノートパソコンで提案書や請求書まで送れるのだ。
しかもデータはウェブで調査が可能。必要な人口動態は行政が作成している。
だが、甘かった。望むデータを、その行政は更新していない。
毎年、人口は変化する。新興住宅地を抱えるこの市に、3年前のデータは無意味。
稚拙ではあるが経済予測のくだりに、多少の時間をかけて作成した。
裏付けとなる人口動態データが最新のものでなければ、訴求性が薄い。
焦燥感だけが先走るため、気分転換を思い立つ。このホテルには大浴場がある。
さっきシャワーを浴びたのに関わらず、2階まで降りて大浴場に入った。
サウナも利用、すっきりして部屋の戻る。あっ。やってしまった。
画面が消えてる。見ると電源が内臓バッテリーのままだ。あわててコンセントを
差そうとしたが空きがない。電気スタンドのそれを外して、つないでみた。
スリープモードになっていたらしく、事なきを得て作業を続けた。
やはり手元が暗い。想定されていないのであろう、ビジネスホテルのコンセントは
たいてい数が足りない。そうそう三角タップがバッグの中に、たしか。
立ち上がった瞬間、飲み残しの缶ビールを倒しキーボードに。画面が出ることは二度と。
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私はパソコンのキーボードに、何かをこぼした経験がありません。
サラリーマン時代、パソコンの横で飲食禁止の通達、当然に思います。
とは言うものの、いまは平気でやっています。
いつか、やるのかな。キーボードのビールシャワー。うっ、想像したくない。
最後まで、お読みいただきありがとうございました




