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Archive for 2月, 2010

No.00763

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「いつまでやってるんだろ、おら・・・」

「んだ?これが、ぱられるくりすちゃにあだっちゃ!」

「え?八甲田山支店に転勤…ですか?」

「まだらお!^^」

「スキーしてる?」

 

 

夜遊び、火遊び、怪我のもと・・・お気をつけあそばせ^^

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は、もう帰っていいぞ。」
体側をこちらに向けて立つ山口課長が、右手の拳でこんこん机を小突く。
少し前に呼ばれ、課長に転勤辞令を渡されたところだ。
その気遣いが分かってはいるものの、田中左京の心が落ち着かない。

「石川、お先に。」
鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔の同僚は、田中と課長の顔を代わる代わる見ていた。
今朝、始発駅から乗った京阪電車に同様、淀屋橋から終点まで乗る。
いつもと同じ生活。違うのはまだ明るいうちに、出町柳の駅を出たことだ。

橋を渡ってパチンコ店に入る。久し振りに入ったそこには、今でも置かれている台が。
以前は嵌ったものだが。よし、魚群だ。あれ、何だこりゃ?
ほんの1時間ほどで2万円、負けた。とぼとぼ歩く。もう、家についてしまった。
録画していたドラマを見たが、面白くない。パートから帰った妻が、驚いた。

「年明けから転勤だ。」
「そう。私たちは行かないわよ。単身で行ってね。」
教育熱心な妻は、概ね子供たちのことしか興味がない。やっと入れた名門校であった。
こうなることは分かっていたものの、赴任先も聞かない妻に釈然としなかった。

週末、送別会が催される。課員だけ、7名のささやかな宴。得意先への挨拶は済ませた。
「いいよな、田中は。仙台支社なら、俺も行きたいよ。」
「名取、おまえ確か仙台だったな。電話すると思うけど、いろいろ教えてくれよ。」
「ああ、いつでもかけて来い。俺は空港の近くが実家だよ。」

転勤と言っても単身で赴任する場合、大層な用意も要らない。
支社の総務部で単身用の住居は用意してくれている。電化製品まで、主な物は揃っていた。
年明け早々の出勤、新年の挨拶の後で紹介された。その日、早速の歓迎会である。
「へえ、京都のかたですか。これはこれは宮城さ、ございん。うふふ。」

二次会のスナックで、色白美人。恐らく日参するんだろう。何となく、そう思った。
大阪支社ほど遅くまで働かない。地下鉄4駅の北仙台にある住居は、駅からも近い。
こんなに早く帰っても何をしていいか分からず、昨夜のスナックへ足が向いていた。
「やっぱり、来てくれたわね。紀代ちゃん、もうすぐ来るわよ。水割りでいい?」

突き出しで出された蒲鉾を見て、ビールもくれと言った。飲み干した頃、紀代が出勤。
飾ったはしゃぎようもせず、田中の姿を見てにこやかな紀代。脱いだコートとバッグを
奥に置いてくると、田中の隣に掛けた。私もビール、もらっていいかしら?
コインランドリーに行く必要もあり、さすがに翌日は店に行かなかった。

「麗美と修太は、どうしてる?特に困ったことはないか?」
「何も変わらないわ。交通費もかかるから、無理に帰って来なくてもいいわよ。」
新婚当時には戻れない。週末は紀代と松島へ行った。何を食べても美味い土地だ。
もう一度、赴任した先の第1位が仙台、と聞いている。田中は、なるほどと思った。

 

 

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あとがき
豪雪地帯のかたは雪かき、という重労働が待っています。南には分からない苦労です。
北国ですから、はい寒いです。ですが仙台市内は雪も少なく、過ごし易く感じました。
東北随一の都市、仙台は都会の便利さがあります。そして、遊びにも事欠きません。
何より、食べ物がおいしくサラリーマンの赴任希望先No.1、が頷けました。

 

 最後まで、お読みいただきありがとうございました





No.00762

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「え?八甲田山支店に転勤…ですか?」

「まだらお!^^」

「スキーしてる?」

 

 

雪が降っておりました・・・ええ、雪が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪が降っていました。
私が船岡の駅に降りた時、雪が降っていました。
仙台を出る時、雪がちらちらしていたのは知っていました。
でも、積もるほど降っていた訳ではなかったのです。

駅舎を出て傘を開いた時、もう辞めようかなって思いました。
来月分の月謝を払い込んだばかりなんだけど。
踏み締める雪の、ぎゅっぎゅっと鳴る音が私を責めるような気がして。
やっぱり、私がいけなかったんです。

「お、いいね。いいね。左から当たる光の影が、うまく表現できてるよ。」
後から声をかけてくださった先生が、隣の生徒のところへ移動する、その時
煙草の匂いがしないことに気がついたんです。変な話でしょう?
何でヘビースモーカーの主人を選んだのだろう、と思ったのです。

教室の14人で、私は上手なほうではないか、と思います。
大学でこそ選びませんでしたが、中学高校と私は美術部でした。
息子の書いた絵が県で入選したことで、私もまた描いてみようと思ったのです。
昔取った杵柄。勘を取り戻すのに、さほど時間を要しなかったはずです。

「おい、カッターシャツがないぞ。」
「いっけなァい。クリーニング屋さんへ取りに行くの、忘れてるわ。」
車を走らせ、着いた時にはクリーニング店の看板は暗く。携帯電話からかけました。
「ごめ~ん。買ってくるから、サイズを教えて。え?40の82?そんな表示なの?」

短気な夫は自分で買ってくる、と言います。私が車庫に入れた時、もう出かけていました。
息子の姿が見えないので、一緒に連れて行ったのでしょう。
食事を用意し、なかなか戻らない二人をテレビもつけずに待ちました。
「なんだ、食べていなかったのか。悟が待ちきれないだろうし、食べてきたぞ。」

もう一度、味噌汁を温める気にもなれず、冷めたままお椀に入れて独りで食べました。
嬉しそうに、食べてきたハンバーグの話をする息子の話も、ろくに聞いていません。
なかなか寝付けない夜。次の朝、寝過ごし慌てて階段を降りました。今朝は出張って。
主人の車が出て行く音が聞こえます。台所のシンクには、茶碗と箸が置かれていました。

家庭を捨てるつもりなんてありません。夫を愛している、かと言うと嘘になります。
でも夫と息子との生活は、愛していたはずです。ただ、それさえも忘れるか、のように
先生を愛してしまった自分に気がつき、どうすることもできなかったのです。
愚かにも想いを伝えてしまった私に、先生は笑みを送り続けてくれました。ただ、それだけ。

「あなた、ごめんなさい。もう、愛してなんかいないわよね。
 美人でもなければ、向こう意気ばっかり強くて、家事も苦手だし。気も利かない。」
夫が私のことなど、もう愛していないことは分かっていました。どうすればいいのか。
「雪が綺麗だ。不思議だな。子供の頃から、雪にはウンザリしているはずなのになァ。」

 

 

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あとがき
先月、宮城県へ出張した時に、運が良かったのか雪に見舞われたのは一日だけでした。
昨年より、ずっと雪が少ないそうです。そんな中で降った日、現地のかたが降る雪を見て、
疎ましいどころか、綺麗なものを見るような目つきをなさいます。
随分と苦しめられたでしょうに、それでも雪が美しく思えるのですね。

 

 最後まで、お読みいただきありがとうございました





No.00761

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「いつまでやってるんだろ、おら・・・」

「んだ?これが、ぱられるくりすちゃにあだっちゃ!」

「え?八甲田山支店に転勤…ですか?」

「まだらお!^^」

「スキーしてる?」

 

 

愛媛県新居浜市の別子(べっし)飴に似てますな^^

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、630円ね。ごちそうさまァ。」
「天ぷらそば、いくらだっけ。じゃ、千円札で。」
「おばさん、ごめんね。1万円札しかないんだよ。ありがと、ごめんね。
 お~い、栗原ァ。まだ、食ってんのかァ?先に行くぞォ。会議、遅れるなよ。」

何かにつけて動作の遅い栗原が、最後の飯を掻き込んだところだった。
「は、はいっ。す、すぐ戻ります。」
「きゃっ。」
後ろも確かめず椅子を立ち上がる栗原。店員の若い女性が、運ぶざるそばを落とす。

樹脂製の器が床で割れる音に、店内の客ばかりでなく暖簾をくぐりかけていた、
大崎係長までも振り返る。心もち見上げた顔の目の辺り、大崎は手を置いた。
「あちゃァ。何やってんだ、栗原は。」
常連客の粗相に、店主も仕方なく寛大にならざるを得ない。

「す、すみません。きょ、今日は会議があるので。す、すみません。」
レジで支払おうと栗原が財布を開いた途端に、何かがばらばらと散る。
部下を見かねて足を止めていた大崎は、どこかで見覚えのある物に驚いた。
それは大崎の次男が持っている物と同じ、ポケモンカードだ。

「もう、先に行くからな。」
呆気にとられていた大崎係長は、部下を見捨てて社に戻る。会議は、もうすぐだ。
はあはあ、ぜいぜい。栗原が会議室に入った時、すでに役員も勢揃いしていた。
「君、何事も余裕を持って行動したまえ。よし、始めるぞ。」

次期開発製品についての意見を求められ、栗原はしどろもどろ。
それもそのはず。会議にではなく、心は携帯電話のゲームにあったのだから。
「栗原ァ。会議中に下を向いてたけど、まさかポケモンカードで遊んでないか?」
大崎係長に指摘されて狼狽する。取り繕っていたら終業のチャイムが鳴った。

「ああん、パパがよしくんのハンバーグ、取ったァ。」
「もう、パパァ。いい加減にしてよ。よしくん、ママのあげるねェ~。」
もうすぐ30歳の誕生日が来る、というのに栗原は子供のままである。
仕事人間の父、かまい過ぎる母に育てられる。マザコンの典型例と言えた。

「これ、よしくん。ごちそうさまでしょ?パパもよ。しようがないわねェ。」
もちろん、食べた後でかたずけなんて、栗原にできる訳がない。
息子より早く、テレビゲームのコントローラを掴んで没頭している。
「パパァ、やられちゃったんだから交代してよォ。ボクもやりたい~。」

「そうそう、よしくゥん。お祖父ちゃんから、お土産ですよォ。」
所用で登米の実家に立ち寄った昼間、父から玩具と菓子を手渡されたのを思い出す妻。
「あっ、太白飴だあ。ボク、これ大好きィ。」
横から、すかさずさらっていく栗原。ヌガー質の飴を噛む。歯のかぶせが外れた。

 

 

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あとがき
宮城県登米市の名物、太白飴は甘くておいしい飴です。
ヌガー質の飴ですが噛まないようにしたほうがいい、と私は思います。
入れ歯の被せが取れても知りません。ちなみに私は取れておりません。
だって、そんな下品な食べ方なんて致しませんことよ、おほほ♪

 

 最後まで、お読みいただきありがとうございました





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