Posts Tagged ‘おもちゃのかんづめ’
No.00881
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パソコン画面と電卓、交互に眺めて妻の小夜子は溜息をついた。
売上に対し経費が大き過ぎるのである。会計ソフトの経費欄は、無情な数字が続いている。
夫で三代、続いた会社を何とか息子に継いで欲しい。大学で経営を学んではいるものの、
あの子に義父のような商才が望めるだろうか。息子は主人に似て、人が良過ぎるのであった。
夫の祖父である大橋伝助は、餅の製造販売で成功を収めた。随分と研究熱心だったようだ。
それをさらに拡大したのは義父である。先代のような職人ではなく、根っからの商売人だった。
コネクションを広げ国内はもとより、海外にも輸出した。その成功でこのビルができたのだ。
5階建ての最上階に大橋家は暮らしている。1、2階を店舗に3、4階を事務所にしていた。
時代が移り変わり、昔ほど餅を食べなくなった。主食の座はとうに追われ、デザートの部類も
今では選択肢の拡大が、業界の首を自ら絞めている。人の胃袋は昔も今も大きさは変わらない。
まったく需要がない訳ではない。人気ブランドは不祥事を起こした後でも売れている。
勝ち組になるかならないか、理論では分かっているのだが。せめて夫に商才があれば、と。
早く嫁いだ長女とその娘、つまり孫と娘、夫との4人で小夜子は動物園に出かけた。
「気分転換になればいいさ。君は仕事のことばかり考え過ぎだよ。」
あなたが考えなさ過ぎなのよ、と言いそうになり気持ちを抑える小夜子。孫はかわいい。
夫の大助は名ばかりの社長であり、会社の行く末に危機感を他人事のように見えた。
「じいじ。優奈、あれやりたい~。」
ふれあいコーナーで、くちばしの存在感が大きい鳥を見つける。100円でカットフルーツを買い、
鳥に見せると飛んできて腕に留まる。くちばしでつついてフルーツを食べてくれるのだ。
もちろん大助はすぐに行動し、それを買ってきた。孫に渡して見守る。嬉しそうな孫。
「ばあば。優奈ね~、あの鳥さんが好きぃ。」
帰りの車中で孫が小夜子に、今日の楽しかった時間を語る。目を細める妻をバックミラーで見た。
信号待ちで停車中に、そうだっと大助は素っ頓狂な声をあげる。一同、驚きは当然か。
「あなた、どうしたの?」
「キャラクターを作るんだよ。オオハシくん、てどうだろ?」
「オオハシくん?悪くないんじゃない?お父様にしては、上出来ですわ。うふふ。」
娘が一応の褒め言葉を呈す。気を良くした大助は、帰りの車で終始、夢を語り続けた。
「じいじのほうが今日は楽しそうだったよ。また、行こうね。じいじ、ばいば~い。」
商標ロゴも変更、オオハシをデザインしたキャラクターを強化する。
すべての商品パッケージに、剥がしやすい静電シールでキャラクターを貼る。めくると裏側に
金のオオハシ、銀のオオハシを印刷。何も出なければハズレなのだが、集めるとポイントになり
商品と交換できる。金のオオハシが出れば「御餅屋の缶詰」がもらえ、銀だと5枚集めることに。
社長の大助は、妻にはもちろんのこと息子の意見も聞いてみた。誰しもが目を輝かせる。
創業から味は代々、自信があった。今の時勢でも原材料にはこだわりを捨てていない。
展開方法に先が見えずジリ貧になっていることを、手をこまねいていたようだ。
あ・な・た、とにこやかな小夜子は夫の背に回り、久し振りにその肩をほぐし始めた。
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あとがき
森永製菓のチョコボールは大ヒットでしたね。1965年発売、と言いますから
既に45年を経過、今でもよく売れているようです。
キャラクターのキョロちゃんですが、子供心に変なデザインだなって思っていました。
でも印象に強く残っています。こんなアイデアが素晴らしいですね。
最後まで、お読みいただきありがとうございました
No.00770
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かつて我が国は、鯨を盛んに食する文化があった。
何らかの理由で打ち上げられた鯨の死体は、巨大な食料であっただろう。
それを口にするうちに自らが沖に出て、捕鯨する漁が起こった。
捕鯨用石器が出土しているようだ。約8,000年前のものと見られる。
そして12世紀以前の記録で、手銛による捕鯨が確認されている。
近代では大型船で出航、キャッチャーボートと呼ばれる船の舳先に設けた銛で
名人が狙いを定めて仕留める。海の男、最先端でもあった。
それは反捕鯨運動という国際的な批判により、撤退をやむなく甘受した。
昭和37年生まれの私は、子供の頃の学校給食に鯨肉のケチャップ煮を口にした。
当然ながら高価な部位ではなかろう。かすかすとした感触を、わずかに覚えている。
然しながら不味いもの、という記憶ではなく一つの通過した食文化として
過去の思い出になっている。そして、今でも入手可能なことを知っている。
価格の形成は、原材料費に留まらない。たとえばテレビがいい例であろう。
ブラウン管のテレビは新品の入手も困難だろうが、価格にして1万円以下。
同等の物が30年前に10万円である。そこに貨幣価値の要因が加算される。
これは需要に対する供給と流通経費が介在するからだ。
過去のようにキャッチャーボートに乗る漁師が、笑顔で酒が飲めた時代に戻れば
鯨肉は牛肉豚肉鶏肉のように、価格競争の渦中に参戦していただろう。
当時より流通システムの充実は、目を見張るものがあるはずだ。
諸国の圧力は、相当数の日本人に悲しい思いをさせ続けていることは間違いない。
ミンク鯨を中心にわずかな調査捕鯨が認められている。
首の皮一枚、とはよく言ったものだが、お陰をもって大和煮の缶詰を入手できた。
開缶すれば懐かしい味が待っていた。既に忘れかけていた存在である。
宮城県石巻市の水産加工業者が製造販売し、日本の文化を守ろうとしている。
何かと頼りなさを払拭できない現政権だが、国際捕鯨委員会に対して我が国の代表は
どこまで食い下がることができるのであろうか。これは宗教問題に似ているような。
一度に一頭しか出産しない鯨、とか哺乳類であるとか、他人事の食文化に
彼らは干渉し続けてきた。対象は日本だけではない。北欧でも貴重な食料なのだ。
私は無力であり、反捕鯨運動に対する知識も稚拙を否定できない。
鯨の刺身をいただき、缶詰をいただき、これが先祖の培ってきた食文化と感慨、
根絶やしにされることに、じんわり涙がこぼれかねない存在の1人だ。
平たく言えば、もっと食べたい。食べられなくなるのは悲しいのである。
鯨の後ろに鮪が見えている。高度成長で便利さを手にした代償で、食料自給率が
凄まじく落ち込んでいる日本。様々な問題を抱え、毎食後に大量の服薬が余儀ない
この国は、国際捕鯨委員会に抵抗することができるのであろうか。
それとも農水大臣の泣き言言い訳を、ニュースで知ることになるのだろうか。
あとがき
鯨の刺身、おいしゅうございました。
鯨の皮の身、おいしゅうございました。
鯨の大和煮、おいしゅうございました。
円谷選手も草葉の陰で泣いてるぞォ~。農水大臣、頑張れェ~い!
最後まで、お読みいただきありがとうございました




