Posts Tagged ‘口癖’
No.00916
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「お父さん、お母さん。誠二の高校、快進撃ね。連日、新聞に載ってるわよ。」
「今月分の新聞なら、まだあるわよ。月曜日の古紙回収に出すつもりだけど。」
「よし、スクラップしといてやろう。あとで思い出になるからな。」
福津誠は段ボールの板をテーブルの上に敷き、カッターナイフで息子の記事を切り抜き始めた。
「あいたァ。」
「どうしたの、おとうさん?」
反射的に尋ねたが、娘の里奈は救急絆創膏の箱を既に持っていた。
「あ、いや、手を切った訳じゃないんだ。下の段まであるのに気付かず、切り離したんだ。」
「あなたの口癖ね。里奈が、お父さんは手を切ったのかって心配したのね。」
「ん?俺、何か誤解されるようなこと、言った?」
「もう、お父さんったらァ。じゃ、行ってくるね。頑張らないと、誠二と同級生になっちゃう。」
昨年の失敗を重ねないため、予備校に通う姉の里奈。弟は野球で推薦入学が見えている。
「昔に比べたら随分と楽になったものだわ。洗濯から乾燥までしてくれるし。」
「そうだな。食器洗い乾燥機で、手で洗うより汚れが落ちるもんな。そのまま乾燥してくれるし。
お袋の頃は大変だったよ。洗濯機は世に出ていたが、うちは貧しくてな。随分、後だったな。」
午前中をのんびりと過ごした誠と、妻の多恵。昼は外食し、そのまま老人介護施設に顔を出した。
「あのォ、福津さんのご家庭では、何か特別な高菜ごはんとか、お作りになっていました?」
思いがけないヘルパーからの言葉に、2人は互いの顔を見合わせた。
「高菜ごはんは、特に変わったことはしていません。と、言うより義母は高菜が苦手で
あまり作ったことがないように思います。その、高菜ごはんがどうかしたのですか?」
「福津さんは、あまりしゃべらないんですけど、たまにタカナメシってつぶやくんです。
施設では時々、高菜ごはんをお出しするんですけど、ほとんど召し上がらなくて。
あ、うちのは鷹の爪を控えてあります。高齢者には刺激物を入れないようにしてますから。」
思い当たることが見つからないまま、施設を後にする。何だか、すっきりしない2人であった。
助手席の膝の上、多恵のバッグに入れた携帯電話が震える。施設に入る時、マナーモードに
したままであった。すぐに出ないものだから、相手もやきもきしていたであろう。
幸い、息子の誠二からであった。明日も弁当を作って欲しい、という他愛もない内容である。
「誠二、明日も弁当を作ってくれよ、だって。帰ったらご飯、炊かなくちゃ。」
「母さん、それだ。そうか、そうか。お袋の口癖だったんだ。思い出した、思い出したよ。」
「なァに、あなた?突然。いったい、何が分かったの?どんな口癖なの?」
「俺は男ばかりの3人兄弟だろ?孝も仁も育ち盛りで、よく食うんだよ。お袋が、メシを炊いても
すぐになくなるから、また炊かないといけなかったんだ。服もすぐ汚すしさァ。」
「もしかして、高菜ごはんじゃなくて、炊かなメシってこと?」
「たぶん、そうなんだろう。認知症が進んだお袋が、昔の賑やかさを思い出したんだ、きっと。」
夕飯はみんなの茶碗に、高菜を載せる多恵。里奈と誠二に、来週の日曜は空けておくように指示。
「お義母さんのところへ行こうか。喜ぶわよ、きっと。ほら誠二、ご飯粒をこぼさないのよっ。」
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あとがき
「なくて七癖、あって四十八癖」などと言います。「しまった」と世間が言うところを、「しけた」と
言う上司がおりまして。要領が悪く、14時や15時頃に出前を頼むのです。
突然、「しけたァ。」部下たちが振り向き、対処を考えなければ、と「どうしたんですかっ?」
「チラシやのうて握りにしたらよかった。」「もう、課長!いい加減にしてくださいっ。」実話です^^
最後までお読みいただき、ありがとうございました


