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Posts Tagged ‘大家族’

No.00915

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「連日、暑い日が続きますが皆様、お変わりありませんか?
 こちらは皆、元気でやっておりますのでご心配なく。
 穴子を送らせていただきますので、お召し上がりください。
 それでは皆様、お身体を大切に。かしこ。」ですって。姫路の早紀子さんからよ。

真知子の読む手紙を、みんなが聞いていた。12畳の茶の間に、この家の家族が集まっている。
吉見家の主人、善一。妻の真知子。長男の直樹。その妻、早苗。次男の正樹。長女の智美。
長男の娘、優奈。そして主人の母である、ひいばあのヨネであった。8人の大家族である。
都会では珍しいが、地方では親子4代の生活も珍しくなかったのである。

元々は農家であったが、今では誰一人として農業に従事していない。
先祖よりの田畑が多少あるものの、すべて小作人が引き受けてくれている。
小作人と言ってもかつての主従関係のようなものはなく、現在は小作人の取り分が大きい。
主人の亡父は村長の経験があり、就労者はみな公務員である。善一も定年で退官したばかりだ。

善一の妹、早紀子から今年も穴子のお中元が届いたところであった。夕食前に、読んだのである。
「それでは、いただきます。」「いただきま~す。」主人の音頭で、皆が箸を付ける。
一応、けじめを付けているが厳格だった亡父と違い、善一はあまり拘らなかった。
だが最も自由に行動しているのは、厳格な夫を持ったはずのひいばあ、ヨネである。

「ああん、ゆうなのトンカツ、取ったァ。」
「早く食べないからだよ。人生は強い者が勝つんだからねっ。いひひ。」
「だってゆうな、トンカツ大好きなんだも~ん。最後に食べようと思ったのにィ~。」
「もう、ひいばあ。意地汚いこと、なさらないでください。優奈はいつまでも言わないのっ。」

廊下歩いている家族の脚を引っ掛けたり、ひいばあは結構、いじわるである。
優奈とゲームをすることがあるが、たいていズルをして勝とうとする。
強く言えば年寄りを苛めるだの、老い先短いだの、始末に終えない。
後姿にぺろっと舌を出す。とんでもない婆なのであるが、どこか憎めないところがあった。

翌日の夕食に真知子が、冷やした茶碗蒸しを出した。いただいたばかりの穴子を使ったのである。
スプーンがないわ、と智美。あたし、取って来ますと早苗が言った。直樹は箸で食べている。
「茶碗蒸しにサジなんか、使わないんだよ。こうやって混ぜて、飲むのが作法さ。」
そんな下品なことできないわ、と智美が言う。早苗が、取って来たスプーンを配った。

茶の間にテレビを置いている家は少なくない。吉見家も例外ではなかった。
食事に全員が、同時に揃うことはない。テレビをつけていても、全員が揃えば消す決まりだ。
「あれ?ホントだ。ひいばあの言うとおりだ。茶碗蒸しは掻き混ぜて飲むのが、正式なんだって。」
朝の番組で、豆知識コーナーとして取り上げていた。正樹が口にする。何人かも見ていた。

「ひいばあは隣村の、良家の娘でね。作法とか習っていたんだ。戦前だけどね。
 あれ?ひいばあはまだ、起きて来ないのか?いつも一番に座っているのに。誰か呼んで来い。」
あたし、呼んできますと長男の妻、早苗が呼びに行く。悲鳴を聞いて、皆もひいばあの部屋に。
布団の真ん中、正しく仰臥している。眠っているかのようだった。枕元に、きちんと衣服をたたみ。

 

 

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あとがき
暑い日が続きますが、体調を崩していらっしゃいませんか?私も先日、不調でした。
こんな日に冷えた茶碗蒸しなど、おいしいですね。穴子とか入っていると最高です。
私は茶碗蒸しを、箸で食べるのが好きです。日本人なので箸が駆使できないと悔しいのです。
でも茶碗蒸しは、箸で掻き混ぜて飲むのが正式な作法だそうです。先日、テレビで見たところですが。

                             最後までお読みいただき、ありがとうございました





No.00898

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火に鍋をかけたままだったが、若菜は茶の間のテレビを見に来た。天気予報である。
よかった。今日は晴れる。慌てて台所に戻り、味噌汁が沸騰していないことを確かめた。
豆腐を2丁、賽の目に切って入れた時に、ガス炊飯器のご飯が炊き上がった。
先に取り出していた沢庵を一本、切っていく。30cmもある皿に、それを盛りつけた。

温めなくていいおかずは、もうテーブルに出してある。義父と義母、夫が戻り座っている。
今年から役場に勤めている義理の妹、靖代さんがお爺ちゃんとお婆ちゃんを呼びに行く。
眠い目をこすりながら、末っ子の理紗ちゃんが台所に入ってきた。
「おはよ、理沙ちゃん。私、やるわ。ありがと。いいから座っててね。」

遅くまで勉強していたのだろう。手伝ってくれるのは嬉しいが、味噌汁の鍋は重いのだ。
寝ぼけ眼で敷居につまづかれでもしたら、大変なことになってしまう。
全員が揃ったところで、義父がいただだきます、を唱和。若菜も合掌して声を合わせた。
「あ、いっけなァい。蕗味噌、出すの忘れてたァ。」

若菜は慌てて取りに行く。お婆ちゃんは、胡瓜に蕗味噌を付けて食べることを好んだのである。
朝は戦争、だなんて大袈裟なことを言う主婦が、おかしくて仕方がなかった。
父母と3人、のんびりと過ごした朝が今では嘘のよう。田舎に嫁いで、いきなり8人家族。
1升のご飯を炊飯しても、朝食だけで消えてしまう。すべてが驚きだった。

準備も大変、片付けも大変。今日は晴れの予報で洗濯物が外に干せるが、8人分の洗濯物は
部屋干しにしたくないのである。20室あるため、使っていない部屋もある。
天気が悪ければ、2階にある12畳の部屋に干す。たちまち、部屋がいっぱいになるのだ。
これをすべて乾燥機にかけていたら、どれほどの光熱費だろう。想像したくもなかった。

都会育ちの若菜が裕介のところへ嫁いで、もうすぐ1年になる。やっと生活に慣れてきた。
空気が綺麗なことや食べ物がおいしいことが、若菜の喜びであった。
嫌なこともあったが、努めて飲み込もうとしていた。この村に骨を埋める覚悟だ。
隣の山田さんがくださった、くさやを焼いた時、若菜はえづく。この臭いは何なのだろう。

夕食の手伝いをしようと義母が入って来た時、嫁の異変に気付いた。若菜さん、あんた・・・
でかしたぞ、と夫や義父。妹や祖父母も喜んでくれた。どうにも、吐き気が止まらない。
翌日、夫に連れられ診察を受けた。3ヶ月、と言われた。嬉しいけど不安もあった。
「おい、俺がやるから座ってろ。おまえ一人の身体じゃないんだぞ。」

家族がいろいろと労わってくれ、分からない事は義母に聞く。たいていが解決した。
「初産は御実家に帰ってもいいのよ。そのほうが気が楽なんじゃないかしら。」
義母の勧めもあり、予定日の3ヶ月前から実家で過ごした。実家のほうでも大歓迎である。
父がローストビーフの店に連れて行ってくれた。父母との食事だなんて、久し振り。

「どうだ、田舎の生活は?裕介君は大切にしてくれてるか?」
夫に対して、何ら不満がないことを告げる。子供が早くできて良かった、と言った時、
訝しげな顔をする母。まだ1年しか経ってないのよ。あのね、と話し始め、つい夢中に。
子供はまだか、の挨拶にうんざり。近所の誰もが、と。気付けば料理が冷めてしまっていた。

 

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あとがき
「奥さんのおなか膨らませないで、自分のおなかばっかり膨らませてェ。」と言われました。
保母さんに、どうして二人目を作らないのか、と具体的な話を聞かれました。
私たちは欲しい時にできた、5年目の子供です。運がいいほうなのでしょう。
不妊症のご夫婦は、他人の目が辛いでしょうね。田舎のほうが、その傾向が強いようですし。

                             最後までお読みいただき、ありがとうございました





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