Posts Tagged ‘登米市’
No.00788
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連日、宮城県ネタで書いているフィクション、ちょいとここらで興冷めを。
と言っても気付いておられると思うが、これを書いている今は神戸に戻っている。
1月の下旬、仕事で赴いた宮城県石巻市を中心とした一種、回想録である。
5日間ほどの滞在で、石巻市だけでなく県北東部を広範囲に脚を伸ばすことができた。
業務内容は守秘義務に抵触するため、公表できかねる。ご理解をいただきたい。
業種は食品関連、とだけ申し上げておく。お陰様で数々の食材に出会うことができた。
私自身、調理が趣味のひとつでもあり、また独り者であるため
自分で食事の用意することを常とする。早い話が、誰も作ってくれないのだ。
大阪市中央区の生まれなのだが、家庭の事情で愛媛県南部の海辺で育った。
海産物に密接な町であったし、頻繁に釣行も。真鯛の姿造りくらいなら造ることができる。
回想するにあたり、レパートリーを悲観する。この場合、自身の問題ではなく環境に対し。
例えば冬季、カワハギの肝造りは最高だが、かの地では煮付けしかしなかった。
他にも思い当たる節がない訳でもない。年齢と共に経験を重ねることができた今、
同じ食材でも、様々な調理方法を知る。そして口に入れた時に、幸福を感謝してきた。
邪推かも知れないが、育った地では海産物が豊富にあり過ぎて、工夫の必要もなかったのでは
ないのだろうか、と思う。現況に満足すれば、成長は望み難いのである。
失敗は成功の元、などと耳にする。概ね、失敗を慰める用い方のようであるが、
失敗を活かせる啓蒙でもあるようだ。泣いてばかりはいられないのである。
魚を煮付けて、寝かせた鍋の中で煮汁が魚のゼラチン質で固まっている。
いわゆる煮こごりである。これがゼリー寄せ、というカテゴリーを生んだのだ。
宮城県登米市はかつて、伊達式部の知行地であった。奸計、伊達藩3代藩主を逼塞させて
仙台藩を牛耳ろうとした伊達兵部の甥である。今でも残っている、貴重な文化財建造物は
かつての栄華を計り知ることができる。随分と潤っていた土地柄なのであろう。
しかし、領民にとっても栄華の裾野が広がっていた、とは断定しかねる。
登米市でいただいた油麩の料理は、油麩丼だった。カツ丼や親子丼のように
食肉然と載せられて、周りにお決まりの玉子調理が付いていた。
麩であることは間違いない。記憶の中の固定概念と、大きく異なったのは食感である。
柔らかい鶏肉のような油麩は、旨味においても鶏肉の出汁に符丁が合った。
肉が食べられないかたのために作られた話や、肉の保存が困難な夏の食べ物として、
宮城県北部の郷土料理に根付いた話を聞かせていただいた。
昨年、夏に訪れた秋田県の、稲庭うどんの悲話を思い出した。本当の誕生秘話は分からない。
肉が苦手なかたのために作られたのか、食べたくとも肉が入手できなかったのか。
ただ自然食材ではなく加工食材であるから、どなたかが発明なさった過去があるはずだ。
神戸の自宅に戻った時、膨大な量の宮城県食材が視界にある。ありがたい話だ。
ある日、味噌汁を作ろうと出汁を採り、具材に乏しいことを気付いた。
無難なところで油麩を入れてみる。鶏肉のような食感が懐かしい。また、行きたいと思った。
あとがき
今だから言いますけどね、麩って何よって思っていました。
これの何がおいしいんだろう、とね。ところが栄養豊富で、言わば健康食品なのですよね。
そろそろ健康を意識しなくちゃ、などと思いながら用意した朝食が多くて、ふうふう言っておりました。
実は、ずっとあとで家にあることを思い出したんです。ええ、使ってみました。これはおいしいですね。
最後まで、お読みいただきありがとうございました
No.00761
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「はい、630円ね。ごちそうさまァ。」
「天ぷらそば、いくらだっけ。じゃ、千円札で。」
「おばさん、ごめんね。1万円札しかないんだよ。ありがと、ごめんね。
お~い、栗原ァ。まだ、食ってんのかァ?先に行くぞォ。会議、遅れるなよ。」
何かにつけて動作の遅い栗原が、最後の飯を掻き込んだところだった。
「は、はいっ。す、すぐ戻ります。」
「きゃっ。」
後ろも確かめず椅子を立ち上がる栗原。店員の若い女性が、運ぶざるそばを落とす。
樹脂製の器が床で割れる音に、店内の客ばかりでなく暖簾をくぐりかけていた、
大崎係長までも振り返る。心もち見上げた顔の目の辺り、大崎は手を置いた。
「あちゃァ。何やってんだ、栗原は。」
常連客の粗相に、店主も仕方なく寛大にならざるを得ない。
「す、すみません。きょ、今日は会議があるので。す、すみません。」
レジで支払おうと栗原が財布を開いた途端に、何かがばらばらと散る。
部下を見かねて足を止めていた大崎は、どこかで見覚えのある物に驚いた。
それは大崎の次男が持っている物と同じ、ポケモンカードだ。
「もう、先に行くからな。」
呆気にとられていた大崎係長は、部下を見捨てて社に戻る。会議は、もうすぐだ。
はあはあ、ぜいぜい。栗原が会議室に入った時、すでに役員も勢揃いしていた。
「君、何事も余裕を持って行動したまえ。よし、始めるぞ。」
次期開発製品についての意見を求められ、栗原はしどろもどろ。
それもそのはず。会議にではなく、心は携帯電話のゲームにあったのだから。
「栗原ァ。会議中に下を向いてたけど、まさかポケモンカードで遊んでないか?」
大崎係長に指摘されて狼狽する。取り繕っていたら終業のチャイムが鳴った。
「ああん、パパがよしくんのハンバーグ、取ったァ。」
「もう、パパァ。いい加減にしてよ。よしくん、ママのあげるねェ~。」
もうすぐ30歳の誕生日が来る、というのに栗原は子供のままである。
仕事人間の父、かまい過ぎる母に育てられる。マザコンの典型例と言えた。
「これ、よしくん。ごちそうさまでしょ?パパもよ。しようがないわねェ。」
もちろん、食べた後でかたずけなんて、栗原にできる訳がない。
息子より早く、テレビゲームのコントローラを掴んで没頭している。
「パパァ、やられちゃったんだから交代してよォ。ボクもやりたい~。」
「そうそう、よしくゥん。お祖父ちゃんから、お土産ですよォ。」
所用で登米の実家に立ち寄った昼間、父から玩具と菓子を手渡されたのを思い出す妻。
「あっ、太白飴だあ。ボク、これ大好きィ。」
横から、すかさずさらっていく栗原。ヌガー質の飴を噛む。歯のかぶせが外れた。
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あとがき
宮城県登米市の名物、太白飴は甘くておいしい飴です。
ヌガー質の飴ですが噛まないようにしたほうがいい、と私は思います。
入れ歯の被せが取れても知りません。ちなみに私は取れておりません。
だって、そんな下品な食べ方なんて致しませんことよ、おほほ♪
最後まで、お読みいただきありがとうございました
No.00744
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警官が夜間、繁華街を警邏中に泥酔者を見つけた場合、保護する。
また泥酔者を目撃する通報等に因っても、現場に駆けつけて同様の行動。
泥酔者は尋常の理性を失う可能性があり、暴れだすことがあるためだ。
そして保護された泥酔者は保護室に収容される。いわゆるトラ箱だ。
トラ箱と違って、ブタ箱と呼ばれる設備がある。
こちらは泥酔者を収容する目的ではない。酒に酔って公衆に迷惑を掛ける存在と
一線を画す者が対象になる。被留置者の逃走及び罪証隠滅の防止が目的なのだ。
犯罪者と思しき容疑者が拘留または留置される施設で、これが留置場である。
宮城県登米市にある旧登米警察署庁舎が、警察資料館として公開されている。
一部のかたを除き警察とは実生活において、直接の縁がないことが多いだろう。
私はサラリーマン時代、顧客としての警察官に多数、お世話になった。
また個人的にも関係があり、十指の指紋が大阪府警にデータとして残っているだろう。
そんな話をすると私が犯罪者ではないか、と思われるので面白半分、公言している。
実際は自家用車が盗難に遭遇、捜査協力しただけなんだけど、その自家用車が数年後、
また盗まれた。どちらも暴力団が関与しているように、捜査担当者からは聞いている。
2回目の時は発見現場まで、パトカーに乗せてもらった。記念写真を失念、残念無念。
警察署は内部構造を知ることなど、小説やドラマの表現でしか機会がない。
それが前近代的な過去の施設であっても、その歴史的観点に於いて興味がある。
こうやって資料館として、わずかな拝観料徴収で維持管理していただくのは感謝に値する。
私は許されて、留置場の奥に座してみた。そこは正しく、屈辱の空間なのだ。
人気時代劇に於いて水戸黄門は、頻繁に嫌疑のもと受牢に甘んじる。
必ず助け出される脚本だからいいのだが、現実の留置場から逃走するのは至難であろう。
腕力に自信がないので、試みることは来世に持ち越すことにして瞑想を試みる。
背筋を伸ばし目をつぶり、自分が在らぬ疑いをかけられた容疑者として身を置くのだ。
市場で秋刀魚を3尾、300円で購入。しばらく歩くと別の魚屋にも秋刀魚が店頭に。
こっちは380円で4尾。さっきの方が大きいような小さいような。
へい、らっしゃいと声を掛けた店主、私が買う素振りを見せないものだから後ろを向いた。
奥の鯖を補充しようとしたのである。すると私の右からやってくる影。
電光石火、黒い猫が店先の秋刀魚を咥えて走り去ること鮮やか、拍手物の雑技団。
「お客さん、そんなことをされたら困りますなあ。」
先に帰った友人に2尾、分けたものだから私は1尾だけ袋に持っている。
ちょうど後ろ手に眺めていたのを店主は知らず、手を横に下ろせば疑いの眼差し。
「違う。これは、向こうの店で買ったものだ。」
レシートも友人に渡したものだから、証拠もなく。あの店に聞いてくれ、言い訳虚しく
私はすぐさま連行された。話は署で聞こう。ちょうど凶悪犯罪が発覚、取調べは後回し。
妄想の果て、居眠りを。気付かれず閉館されたら文字通りの監禁状態、あな恐ろしや。
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あとがき
しかし堅牢設計でしたね。どこかの政党よりしっかりした構造でした。
留置場の片隅、用便に穴が開けられているのみです。
そこにはパソコンもありませんし、冷蔵庫もありません。電子レンジもなければ流し台もないのです。
洗濯機もなければ、ベッドもない。シャワーもなければ湯船さえも。はあはあ・・・
最後まで、お読みいただきありがとうございました





